はじめに
暴風、豪雨、豪雪、洪水、土砂崩れ、台風、地震、噴火--数えればきりがないほど、日本はあらゆる災害と隣り合わせの国です。そんな国で生まれ育った私ですが、正直なところ、防災を「自分ごと」として真剣に考えるようになったのは、子どもが生まれて、家を買ってからでした。
子どもがいる家庭の防災備蓄は、大人だけのときとは勝手がまるで違います。ネットで「赤ちゃん 防災 リスト」と調べると、たしかに網羅的なリストはたくさん出てきます。でも、いざ自分で揃えようとすると「結局、どれを優先すればいいの?」「これ本当に使うの?」という疑問が次々わいてきました。
この記事は、専門家による完璧なリストではありません。1歳の子を育てる一人の親として、実際に揃えてみて分かった「優先順位」と「続け方」を、失敗も含めて等身大で書きます。これから備える方の、肩の力が抜けるくらいの参考になればうれしいです。
そもそも1歳児の備蓄は何が「大人と違う」のか
大人の備蓄リストをそのまま子どもに当てはめられないのには、いくつか理由があります。
お湯が使えない前提で食べ物を考える必要がある。普段は粉ミルクや手作りの離乳食でも、断水・停電でお湯が用意できない状況だと話が変わります。お湯なしで飲める液体ミルクや、そのまま食べられる市販の離乳食を一定量持っておくと安心です。また、いざというとき食べてくれないかもしれないので、普段の食事から食べさせておくとよいです。
おしりふきは、いくらあっても困らない。これは断言できます。おむつ替えはもちろん、手や口を拭く、最悪お皿やテーブルを拭くのにも使えます。用途が広いので、多めにストックしておいて損はありません。
体温調節が大人より難しい。小さい子は自分で体温をうまく調整できません。大人が「少し肌寒いな」と感じるくらいの快適な温度を、停電中の室内で保つのは想像以上に大変です。使い捨てのカイロや保冷剤を、季節に応じて備えておくと役立ちます。
そして、月齢で必要な物がどんどん変わる。これが子どもの備蓄の一番やっかいなところで、「一度買って終わり」にできません。サイズも、食べられる物も、数ヶ月で変わっていく。だからこそ、後で書く「ローリングストック(普段使いしながら買い足す)」が効いてきます。
もう一つ、見落とされがちですが大事なこと。普段と違う状況に不安を覚えるのは、大人も子どもも同じです。子どもの不安をやわらげるために、「いつもと同じもの」--いつも食べているお菓子や、お気に入りのアイテム--を備えておくことが、地味に効きます(これは後でもう一度触れます)。
我が家で実際に備えている物リスト
参考までに、我が家の備蓄を載せておきます。家庭によって最適な量は違うので、あくまで「1歳児がいる一例」として見てください。
| カテゴリ | 備えている物 | 量の目安 | 選んだ理由 |
|---|---|---|---|
| 水・飲料 | ウォーターサーバーの水 | 20L x 4 | 断水時の飲み水として。普段使いのものを多めにストック |
| ミルク・授乳 | 粉ミルク | 2〜4箱 | ごはんが用意できなかったときの栄養確保 |
| 離乳食・食料 | 市販のベビーフード | 30〜50食 | 栄養士監修で安心。開けてすぐ食べられる |
| 衛生(おむつ等) | 紙おむつ | 4〜8袋 | 使い捨てなので、ストックは多いに越したことはない |
| 衣類・防寒 | 肌着・半袖・長袖・ズボン・ロンパース各種 | 夏用5セット/冬用5セット | 1週間しのげるイメージ。保育園置き用も兼ねる(あとは、かわいくてつい...) |
| その他 | 入眠用メリーの電池 | 3セット | 我が家の寝かしつけの生命線 |
水やおむつのように「普段から使う消耗品」は、少し多めに買って使いながら回すのが、無理なく続けるコツでした。具体的な続け方は後半で書きます。
一般的なリストには載るけど、我が家では使わなかった物
ここが、この記事で一番正直に書きたいところです。世間のリストでよく勧められているけれど、我が家ではあまり出番がなかった物を挙げます。あくまで「我が家の場合は」なので、ご家庭によっては必要なはずです。
知育を兼ねたおもちゃ。良かれと思って用意して、遊び方も教えてみたのですが、ちょっと触ってすぐ飽きてしまいました。子どもの興味は読めません。普段から夢中になっている物が一つあれば、それで十分かもしれません。
絵本(特に紙のもの)。読み聞かせ用に、と思ったのですが、今の我が子にとっては「読む物」ではなく「ちぎる物・食べる物」でした...。月齢が上がれば変わると思うので、これは時期の問題ですね。
シャンプーハット。顔に水がかかるのを嫌がるので買ってみたものの、本人が自分でずらしてしまい、結局顔にかかる。何度か使ってお蔵入りになりました。これは完全に我が子の個性によるところで、ハマるお子さんにはハマると思います。
こうして並べると、「防災用に特別に買い足した物」ほど出番が少なかった気がします。普段の生活で使い慣れている物のほうが、結局は役に立ちました。
逆に、リストで見落とされがちだけど本当に役立った物
逆に、一般的なリストでは大きく扱われないけれど、「これは備えておいてよかった」と感じた物です。共通しているのは、どれも「いつもと同じ」を守るための物でした。
いつも食べているお菓子。栄養や保存食という観点では脇役ですが、不安なときに「いつものおやつ」があるだけで、子どもがふっと落ち着くことがあります。非常時こそ、普段の安心材料が効きます。
おしりふき(前にも書きましたが、本当に万能)。おむつ替え以外に、手口拭き、ちょっとした掃除まで。用途の広さで言えば、我が家の備蓄MVPかもしれません。
使い捨てカイロ・保冷剤。大人だけなら「我慢すればいい」で済む体温調節も、子ども相手だとそうはいきません。季節に合わせて持っておくと安心感が違います。
入眠ルーティンを守る物(我が家の場合はメリーの電池)。寝かしつけの習慣が崩れると、子どもも親も消耗します。「いつもの寝かしつけ」を切らさないための備えは、リストには載らないけれど大事でした。
「備えっぱなし」にしない:我が家のローリングストックの回し方
備蓄の最大の敵は、災害そのものより「気づいたら賞味期限切れ・サイズアウト」かもしれません。買って安心してしまって、いざというとき使えない--これを防ぐのがローリングストック(普段使いしながら、減ったぶんを買い足していく方法)です。
...と、偉そうに書いていますが、我が家のローリングストックは正直順調ではなく、消費が少々勝ってしまうんですよね。だっておいしいんだもん。。。
そもそも、私が勝手に食べてしまう。ローリングストックのつもりで買った備蓄を、気づいたら自分でつまんでいて、いつの間にか在庫ゼロ。「なくなってるな」と気づいてから買い足すので、これはローリングストックと呼べるのか...という状態です。とはいえ「普段使いして買い足す」の精神は、ある意味守れている、ということにしています。
おむつのサイズアウト。安いからと箱で大量買いしたら、子どもの成長速度を読み切れず、1パック残してサイズが合わなくなってしまいました。子どもの備蓄は、大人と違って「同じ物を回し続ける」ができない。ローリングストックするなら、今のサイズだけでなく、少し大きめのサイズも少量置いておくと、こういう取りこぼしが減ると思います。
ポイントは、点検のきっかけを生活の中に作ることだと感じています。我が家はまだ仕組み化できていませんが、「防災の日」や季節の変わり目など、年に数回見直すタイミングを決めておくと続けやすいはずです。
まとめ:完璧を目指さず、まず「子ども分」から
子どもの防災備蓄と聞くと身構えてしまいますが、全部を一気に揃える必要はありません。まずは、大人の備蓄では代用できない「子ども特有の物」--ミルク、おむつ、離乳食--から始めるのが現実的だと思います。
そして、子どもは成長します。一度揃えても、サイズも、食べる物も、必要な物も変わっていく。だから「完璧に備える」より「見直しながらゆるく続ける」ほうが、長い目で見て続きます。
我が家もまだまだ完璧にはほど遠く、勝手に備蓄を食べてしまう日々です。それでも、「何もないよりはずっとマシ」くらいの気持ちで、少しずつ整えていければいいのかなと思っています。この記事が、これから備える方の肩の荷を少し軽くできたなら幸いです。